リレー小説『踊るサクリア』01 by TAD

今日からあたしは人間不信だ。加えて情緒不安定でもある。
今さっき、隣のアンジェリークの部屋にオスカー様がやってきて・・・あ、ええと、ご訪問されたご様子で、ええい、面倒ね・・・とにかく朝一番、オスカー様がアンジェリークの部屋を訪ねられたのである。
そりゃあね、守護聖様が私たち女王候補の部屋を訪ねられるのは珍しいことでも何でも無い。あたしだって、つい先日オリヴィエ様のご訪問を受けて、森の湖にデ、デ、デ、デートしたんですもの。(思わず力が入ったわ)
だからあたしはつとめて無関心を装おうとしたけれど、相手がオスカー様じゃないの。ホントは気になって仕方なかったんだ。
いけないこととは思いつつも、あたしはテーブルの上にあったコップを手にとって、隣伝いの壁に耳を押しあてた。
最初、オスカー様の快活な笑い声が聞こえて、それからアンジェリークのざ〜とらしい笑い声も聞こえた。
ところが、その先が一向に要領を得ないのである。
軽量鉄筋プレハブの、いかにも安普請って感じの我が寄宿舎だけれど、ナゼか防音だけは行き届いているようで、その点、私は満足していたのだけれど、この時ばかりはこの防音性が憎たらしい。
とにかく、オスカー様とあのカマトト娘は何を話しているっていうの?
こう言っちゃなんだけど、私は秘かにオスカー様をお慕いしていたのである。
そりゃあ、あたしだって全宇宙を司る次期女王候補・・・。
面と向って「お慕いしてる」なんて言えるワケ無いし、その気持ちが悟られることもないよう、日々気を配ってきたつもりだ。
けれど、3日に一度はオスカー様との会話は欠かさなかったし、育成だって炎のサクリアを中心にお願いしてきたじゃないのよ!
(おかげで私の大陸は赤い建物で一杯なのよぅ!)
こんなことなら3日に一度と言わず、毎日オスカー様に会いに行くんだったわ。今となっては自分の思慮深さがいまいましい。
それはともかく、オスカー様がこのあたしを差し置いてアンジェリークを訪問されるなんて・・・。
一体何を考えているのよぉ。
あたしは隣伝いの壁を恨めしく睨めて肩を落とした。

《続く》


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