リレー小説『踊るサクリア2』32 by WON

「よう、何かあったか?」
 店に入った途端にこれだ。オリヴィエは小さく息をはいてカウンターに座った。
 時々演奏に使わせてもらうこのカフェに、オリヴィエひとりで来ることはまず無い。向いにいる店の主人はいい意味でも面倒な意味でも勘が良く、オリヴィエの反応を見てそれ以上問わず構わず、香りの強い紅茶を置いただけ。
「・・・あのさ、知ってたら教えてほしいんだけど」
 オリヴィエはスプーンで赤い液体をゆっくりかきまぜながら言った。
「最近この街にやって来た・・・」
「王族、アーティスト、軍人だな」
「あーきっとそれだ。さすがカティス」
 紅茶の湯気の向こうで、主人は余裕の笑顔を向けた。


 
 一方こちらは学園の女子更衣室。
「あの鍛え抜いたカラダっ!やっぱオトコは腰よね〜〜〜」
「何言ってんのよ〜結局は顔よ顔っ、肌もねぇ卵みたいにつるっつるだあったんだからぁ〜」
「でもさぁ、ティムカ先生はどう見ても貴族か王族だったじゃない?ほんとの玉の輿かもよぉ」
『キャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!』
 ・・・と、新しく来た教育実習生の話題で持ち切りだった。
 それを横目に押し黙っていたオンナが2人。
「目新しいだけで、よくあそこまで喜べるわね。会長達に失礼だわ。ねぇアンジェリーク」
「ロザリア〜〜〜、私もオスカー先輩のことを聞いてなければ、あっち側にいたと思うんだけど〜」
「何よ?オスカー先輩のことって」
「あれ?ロザリア知らない?実はね〜〜〜オスカー先輩だけじゃなくてぇ〜〜〜」
「何なのよ!!早くおっしゃい、アンジェリーク!」

《続く》


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