老人看護の基本



   老化に伴う心身の機能低下に加え、疾患や障害によって日常生活全般に看護援助が必要となる。
 老人の場合、症状の改善を図ると同時に、日常生活の機能低下を防ぐことが重要。

 個別性をふまえた看護援助を実施する
   老化による機能低下は、個人差が大きい。また、老人は個々に長い生活歴をもち、価値観や判断基準、
   生活習慣を確立している。対象個々の身体的機能や日常生活の能力を把握して、対象にあった援助を
   見出し個別的な看護を実施する。
  (1) 老人のペースを尊重する
     老化が進むと行動に時間がかかったり,理解力の低下や物忘れも多くなる。新しい環境への適応も
     鈍ってくる。行動や理解に時間を必要とすることを認識し、対象に合わせたペースで援助する。
     老人の行動を批判すると、自尊心を傷つけるばかりでなく、自信を失わせることになるので注意する。
  (2) 自尊心を尊重する
     日常生活において、心身の機能の衰えを自覚させざるを得ないため、老人は自信をなくしたり、不安を
     増大させやすい。老人に接するときは、言葉遣いや態度に注意して,自尊心を傷つけないように心がけ
     る。
  (3) 日常生活の自立を目指す
     老化や疾患によって、日常生活能力が低下しやすい。特に、高齢者は介助を受けることで依存的傾向
     が高くなるので、可能な限り日常生活が自立できるように残存機能に働きかける。高齢者の持っている
     可能性を信じそれを、探し出す努力をする。
  (4) 合併症、二次障害の予防
     疾患の回復に必要な安静も、長期化すると合併症や二次障害を引き起こしやすいので注意する。
       合併症(褥創、肺合併症、尿路感染、筋肉や骨の萎縮、痴呆)
       *合併症や二次障害が生じると、さらに安静が長期化し、全身の機能低下が進むので、予防に努める。
        安静の程度や部位に応じて
          @体位変換
          A四肢の他動・自動運動
          B自発性を高めるための援助
          C日常生活援助(食事、排泄、清潔)
                             など確実に実施する。

  (5) 継続した線密な観察を行い、異常の早期発見に努める。
  (6) 家族に対する支援を行う:家族に対しては介護などの必要な知識や技術,教育、指導をすると同時に,家族の
     看護負担に対する配慮を行う。
  (7) 老人を取り巻く関係者間の連携を図り、協力関係を密にする。
  (8) 老人の安全、安楽を守る。
  (9) 精神面への対応:老人は老化や疾病により不安感、喪失感、孤独感、恐怖心などさまざまな心理的反応が現れ
     る。老人の心理状態を理解し暖かい思いやりのある態度で接していく。
  (10)継続した医療看護の援助