リクエスト小説『Goodfellas, Say nothing』   04

  ひとしきりの話し合いの後、庭にはオスカー、オリヴィエ、リュミエールの3人だけが残った。すっかり日は傾いて、空は美しく朱に染まっている。
「はは、それにしてもおっかしかったねえ、お子さま達。気の毒なくらいがっかりしてたよ」
 オリヴィエは思いだし笑いを堪えながら言った。リュミエールはテーブルの上のカップをワゴンに片づけながら、いささか困惑しながらも微笑む。
「私とオリヴィエの会話を勘違いしていたなど。そのような事、起こり得るはず無いというのに・・・」
「ま、アイツらも生意気にそういう年頃だってことだ。ま、今度少しは外に連れ出してやるか」
 カップの底に残った少しばかりのカプチーノを慌てて一飲みしてから、オスカーも笑う。たしなめるような口調の水の守護聖。
「またそのような。年かさの者として、指し示すべき姿勢自体が間違っています」
「大体、アンタとナンパに行ったって、真っ先に消えるの目に見えてるじゃない。何の役にも立ちゃしないね、断言!!」
 からかうオリヴィエを軽く睨むオスカー。
「まったく・・・お前等と出会ったのがこの聖地で良かったぜ。お互い守護聖なんて枷でもなけりゃ、事と次第によっちゃ、ぶん殴ってる」
「はっは、一人の女取り合ったりして?」
 オリヴィエは投げ出されたくだんの台本を指ではじいた。
「同じ女性を好きになることなど、こうまで個性の違う私達にはあり得ないことのようにも思えますが」
「そりゃわからないぜ?リュミエール。誰にとっても魅力的な、スペシャルなレディが今後現れないとも限らない」
「考えたくありませんね、あまり。・・・とくにあなたは相手の気持ちなどおかまいなしに強引な行動に出そうで」
「あ〜ら、そういうとき一番強引なのって、案外リュミちゃんって感じ!」
「それは言えてるな、お優しい顔して取り入るんだ。見えるようだぜ、その手口」
「失礼な」
 彼はそれだけ言って、ワゴンを押しながら廷内へ消えていった。

「短気だよねえ、リュミちゃんてば。やっぱリュミちゃんといざこざするのはゴメンだね。もちろんアンタとも、だけど」
 後ろ姿を見つめつつ、オリヴィエは肩をすくめた。
「ま、そんな心配は必要ないさ」
「ここが聖なる場所だから?」
「いや、たとえどんなレディであろうが、俺が本気になったら俺の手の中に落ちるからさ」
「ふ・ざ・け・ん・なっっ」
 二人は大声で笑った。オリヴィエは立ち上がる。
「さて。ワタシも帰るよ。今日はなんだか疲れちゃった、リュミちゃんて頑固なんだもん。休日返上も楽じゃないよ、ホント」
「知れない腹の底から出る本音が見え隠れ、さぞかし嫌味な会話だっただろうな、ぞっとするぜ。疲れるのも無理ないな」
 オスカーは皮肉たっぷりに言葉を投げた。


「・・・よく意味がわからないね〜え。じゃ、リュミちゃんによろしく」
 くるりきびすを返す。背中を向けたまま片手を上げて別れの挨拶をし、とんだ茶番の主役は退場。幕が下りるように、闇が辺りにゆっくりと降りて、今日も今日とて平和な聖地の一日はその終わりを告げる身支度を始めるのだった。

(終)


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