◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆アトノマツリ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
結果なんだか異色作

短編『見てないようで見てる』


 DVDで「マルチアングル」なる機能があるソフトがありますが、ショート4作目となるこのお話は、まさしくそういった感じでしょうか。一応お話はリュミエールを中心に書いてありますが、それはあくまで「リュミエールバージョン」ということで、オリヴィエVer.もオスカーVer.も見ようとすれば見れる、ということが創作で書くことはできないもんかなとトライしてみたのがコレです。結果(力量不足もたぶんに手伝って)絶妙な中途半端感が読むヒトを困惑に陥れる異色作ってな趣になってしまいました。てへへ。(<アタマかいてごまかすなぁっ!)
 元々水先案内人とか狂言回しとか、さきのDVDのたとえで言うならカメラの役割をするためだけに設定した“鳥”だったのですが、コイツがなかなか。言うまでもないことですが、私はとどのつまり中堅しか書きたくないからこんなHPをやっているわけなので、他守護聖様等はともかく、こんなどこのどいつだってな小憎らしいガキ(=鳥)のことなんかどうでもいい、はずだったのに。この鳥の存在が絵本的なほのぼの感を強く醸し出す効果を生んでしまったのが自分的には予想外でした。しかし、それは「緩和」という形で逆に功を奏したと言えなくもありません。なぜならこのお話は、読みようによっては「結局は他人、完全にわかりあうことなど不可能である。信じていたものなど所詮都合のよい思い込みの幻想に過ぎないのだ」といった、非常にシビアな現実を白日の下に晒す重いテーマ性を持つ話だからです。
 この話、たとえば。指輪が手元に戻る前に「オスカーが隠匿した」という事実をオリヴィエが知ったとしたら。後のお楽しみを約束する指輪をリュミエールに迂闊に失くされたとオスカーが知ったら。そして何の関わりもなかったはずのことで、一方的に責められることとなったリュミエール…。険悪ムード必至です。そしてその険悪は確実に後の結果にも影響を及ぼしたはず。すべてはタイミング。この話の場合は、奇跡のようにうまくまるくおさまった、という状況なだけなのであります。そしてかような綱渡り状態は、おそらく誰の現実にもある。物事というのは、人知れず起こっては誰にも気づかれぬままおさまって、というのを繰り返しているのです。時にその好循環を外れ当然トラブルに発展もしつつ…。ああ、なんて怖い。こんな怖いことを平然と私達は日々行っているわけなのです。今日も無事に過ごせたことを、この宇宙を統べる女王陛下に感謝しなければいけません、皆様!!
 ……とまあ、上記のようなことを考えて書くようなキシダではないことは、こんなコーナーを読むところまで心の広い方々には既に言わずとしれたこと。後からならもっともらしいことがいくらでも言えるということの好例ですね。悪例だって。
 単純に、マルチアングルで中堅の3人が「何か事が起こった場合に、それぞれどういう考え方をしてどういう言動に至るか」ということだけをやってくとどうなるのかなと。それだけを、ただただ考えて書きました。で、やっぱし険悪ムードの3人なぞ想像するだに寂しくなるのでハッピーエンドがいいよね、ってことでこういうオチ。意外とその「ハッピーエンド」にたどりつくに苦労が無かったのは、ひとえに3人のお人柄でございましょう。なんつーか…前向き…いや最終的には楽観主義に行き着くタイプというか(笑)。
 要するにこの話を読んだ方だけが、この一件のすべてを知っている、ということになります。お三方にはぜひともご内密に(笑)。世の中、知らないほうが良いことってのもありますですよー。楽観主義者だけど結構根に持つタイプでもありそーなんで、古いネタでも改めて怒り出したりしそうだ…。っていうか、そんなオマエの見解をこそ、改めろっちゅーの。少なくとも「お誕生日更新」をうたうなら、もう少しネオスウィートでローマンスなお話にしましょう。ごめんなさいリュミエールさま…。


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