リレー小説『踊るサクリア2』20 by WON

 男子が各寮の対抗意識に燃えてる頃、調理実習室は女子の戦場と化していた。
 寮対抗球技大会(寮別クラスマッチ)といえば『新しい出会い』。
 寮対抗球技大会といえば『印象度アップ』。
 寮対抗球技大会といえば『差し入れ』なのである。
 もちろん彼氏がいる場合は「ふーん、キミって結構料理も上手いじゃん」などと言われんがタメだけに夜中から頑張るのであるが、それはあくまで少数派。ほとんどが生徒会御三家(オスカー、リュミエール、オリヴィエ)をターゲットに、このチャンスを逃すまいと頑張る健気な女子であった。(なかには男子もチラホラいたが・・・)
 告白したりモーション起こす勇気があるなら、365日いつだっていいだろう。だが!青春は何故か『イベント』に弱い・・・。創立祭、寮対抗球技大会、クリスマス前...etc...となると、なんだか普段は諦めている人でもイケそうな気になったり、また無理なはずの相手が落ちてしまったりするから不思議である。・・・とにかくチャンスなのだ!ガッツなのだ!そして、かのアンジェリークも例外ではなかった。前日の午後からキープした調理実習台で悪戦苦闘。一方すっかり片付け終わったロザリアは、たまたま通りかかったアンジェリークの実習台を見て驚いた。
「・・・アンジェリーク、アナタ何を作っているの?」
「・・・・え?・・・・見てわからない?」
 確かに見たままにしか見えないモノではあるが、ロザリアには理解できなかった。
「デコレーションケーキ・・・2段・・・に見えるわ」
「当たり!」
 アンジェリークの大きなグリーンの瞳に、腰が引けたロザリアである。
「まさか、生徒会長にあげるんじゃないでしょーね?」
「え?・・・そうだけど・・・どうして?どっか変?」
「変って、変じゃないとでも思ってるの?」
「だって疲れたら甘いものが食べたくなるんでしょ?」
 (そーゆー問題か!)ココロでツッコミ入れたロザリアだったが、このインパクトに印象度では負けたかも・・・と、両手に抱えたランチボックスとハニーレモンに目を落とした。

《続く》


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