リレー小説『踊るサクリア2』15 by WON

「オリヴィエ・・・・・・・・は・早いですね」
「ふられたんだろ、ザマーみろっ!!」
「オスカー、私がそんな失敗すると本気で思ってんの?で、まだ何か残ってる?あー、お腹減った」
 オリヴィエはトレイにお茶と空の皿を乗せ、少々乱暴に2人の向かいに腰を降ろした。
「ふられたんじゃなかったら、なんで半時間もしないうちに戻ってきたんだ?何やった?言えよ」
「オスカー、言葉を選んでください。・・・それで何かトラブルでも?」
 結局は興味津々の2人だが、その手はオリヴィエの皿にご飯を分け、マヨネーズを心もち除けたアジフライをそれぞれ差し出している。オリヴィエは熱いお茶に口をつけて、その奥から上目使いに2人を見ながら「THANK YOU」とだけ言った。
「おい、何も話さない気か?大体お前は秘密主義なところがあるだろ!あ、リュミエール、オマエもだ」
「え?私がいつ?」
 本当に心当たりがないといった顔でリュミエールが驚く。
「あるじゃないか〜。この間だって夜中に俺の部屋に来てCDを貸してくれと叩き起こしといて、どうするんだ?って聞いても”いえ別に〜”ときた!”起こして申し訳ありませんでした”なんて謝るくらいなら、ワケを言えワケをっ!」
「ワケなどありません。単に欲しかった曲をアナタしか持っていなくて」
「!・・・リュミエール、もしやプレゼントMDの中身は俺のCDか!?」
「いけませんか?」
「この〜!ぬけぬけと〜〜〜!!」
「彼女のイメージだったら私の持っていたCDよりも、オスカーの・・・」
「だからと言ってだな、アンジェリークの飛び降り事件でクタクタになってる俺を起こして」
「ですから謝ったんじゃないですか。本当は声だけかけて勝手に探させてもらおうと思っていたのです。ですがオスカーの部屋ではそのCDがどこにあるのかさえも・・・」
「おい!俺の部屋が散らかってると言いたいのか?確かにそうかもしれんが、大体お前は」
「はーい、ストップ〜☆こんな夜中に2人ともテンション高いねえ」
 この会話の間にトレイの上をすっかり空にしたオリヴィエが止めに入る。量は少なかったがお腹は落ち着いたらしい。そしてポツリと言った。
「彼女・・・耳がね、ちょっと・・・」
「は?」
 同時にオリヴィエに疑問のまなざしを向けるオスカーとリュミエール。
「耳・・・ですか?」
「おい!オリヴィエ、耳が悪いからヤメるなんて最低だぞ!」
「誰が聴覚の話してんのよ。ワタシが言ってんのはカ・タ・チ・」
「え?」
 再び目が点になるオスカーとリュミエール。
「昼間は髪で隠れてたから見えなかったんだけど、今夜は彼女アップにしててさ、期待させすぎたかな〜ワタシ」
(そりゃあ期待するだろー!)心でツッコミを入れるオスカーとリュミエールである。
「でも、なぜ耳のカタチがそんなに重要なんですか?オリヴィエ」
「あれ?リュミちゃん知らないの?女性の耳っていうのはねぇ・・・」
 小声になりながらリュミエール耳元に口を近づけるオリヴィエ。
「おい!3人しかいないのにコソコソしなくていいだろ!俺にも聞かせろっ!」
 っと、どこか妙なニュアンスを察知した男子3人、落ち着きが無い。
 そうしてしばらく「まじかよ?」「そんなっ!」といったひそひそ話が続いていた。

《続く》


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