リレー小説『踊るサクリア2』06 by WON

アンジェリークを教室に届け終えたパスハが警備室に戻ると、生徒会臨時首脳会議が開かれていた。
「よう!パスハ」
「こんにちわ」
「お邪魔してるよ〜ん」
そう”いつもの場所”とは、学園のあらゆる場所に設置されたカメラがスイッチひとつでモニターに写し出される警備室のことだった。ここならどんな事態が発生しようと対処できる。抜け目が無いというか、小心者というか、どこか真面目な3人である。
パスハは「まだ授業中ですよ」とだけ言って仕事に戻った。

「で、何なんだ?面倒なことって」
ライブのセットリストはすんなり決まったので、話題はリュミエールの悩みに変わっていた。
「それが・・・セクハラについて男性の立場からコメントが欲しいと、ロザリアに頼まれて・・・」
「何それ〜〜〜!オスカーに頼まないトコがロザリアらしいけど〜」
大笑いするオリヴィエに、すがるような眼差しを向けるリュミエール。
「本気で困っているのです・・・」
「ああ、それなら」と席を立ち、オスカーは部屋の隅の『忘れ物』と書かれた段ボール箱の中を探り出した。
「どうしました?オスカー」
「世の中の女が全部これなら、セクハラなんて無くなると思った本があったはずだ」
「本当ですか!ぜひ読ませてください」
「あった、あった。ほれ」
アンダースローで投げられた本を、リュミエールは顔面2センチ手前でぴたり掴んだ。
「ありがとうございます!オスカー」
「フッ、気にするな。じゃ飲み物買ってくるぜ」
オスカーはそう言い残すとダッシュした。オリヴィエがリュミエールに渡された本を覗き込む。
「ああ、持つべきものはいい友人ですね・・・」
そう言って晴れやかな笑顔を浮かべるリュミエールに、オリヴィエがため息まじりに呟いた。
「リュミちゃん・・・その台詞、本を読んでからにしたら?」
「え?」
リュミエールの手の中には『キューティーハニー』と書かれた漫画本が乗っていた。


一方、パスハに3階の教室まで送られたアンジェリークは、窓際の席から外を見ていた。長々と続く担任の校則説明など耳に入っていない。
(あのサラってオンナっもうちょっとだっだのに〜〜〜!おまけに用務員が彼氏だとぉ!・・・いい男だったわ)
そんなアンジェリークを禁めるように、心臓に響く赤が視界を横切った。
(オスカー先輩だっっっ!!)
中庭には、自販機にリズム良くコインを入れるオスカーが確かにいた。
いくら他のいい男に気をとられても、唯一無二!炎のような赤い髪だけは見間違うはずが無い。
アンジェリークは担任が黒板に向かった隙に、すばやく窓から飛び出した。3階のバルコニーから木をつたって降りるつもりだ。しかし、最初に掴んだ枝は、あっけないほど簡単に折れた。
(ヤバっ!)と思った瞬間、合い言葉はガッツな彼女はやっぱり叫んだ。
「オスカー先輩ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

《続く》


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