リレー小説『踊るサクリア2』04 by WON

「アンジェリーク・・・」
オスカーの100倍速検索がはじき出した該当データは目の前の少女と似ても似つかない。
心底驚きを隠せぬままオスカーはアンジェリークの目の高さまで膝を折った。
「あ・の・アンジェリークか?3年前、叔父貴の田舎で・・・」
「そうでぇーーーす!!思い出してくれたんですね!」
(うふ。オスカー先輩驚いてるっ!!そりゃぁそうよね〜、少しでもオスカー先輩に似合う女性になるためにホント血を吐く日々だったんだもん!まさに虎の穴って感じ〜!)
「まさか、俺を追いかけて・・・」
「もちろんです!」
どうやら普通の再会ではないと理解したオリヴィエが一歩引こうとした時、リュミエールが笑顔で言った。
「2人きりの方がよろしいですか?」
気を利かせるつもりらしい。
「い・いや・・・」
「ですが、オスカー・・・」
「一緒にいてくれ、頼む」
とても彼から聞けるとは思えぬ台詞に、さすがのリュミエールも笑顔を失った。


「これから同じ学校で顔を合わせるわけですから・・・」
「ちょーっと詳しい説明が欲しいわね。アンタの友達として」
オリエンテーションがあるからとアンジェリークだけが消えた聖堂の裏で、力なく壁によりかかるオスカーを2人は囲んだ。
「説明しようにも・・・俺自身混乱して・・・」
「どうしたのですオスカー、あなたらしくない」
「ちょっと待って、リュミエール」
オリヴィエが胸の前で組んだ手をゆっくりほどき、赤い前髪をかき上げた。
「覚えてない?中等部3年でオスカーが引っ越した時のこと」
「ええ、もちろん覚えていますよ。ずっと一緒だった私達はなんとか彼だけでも残れないかと、いろんな作戦を立てて・・・」
「そうそう!!今思えばバッカみたいだけどさぁ・・・ってそうじゃなくてっ!」
「ああ、1週間で戻ってきた時のことですか?」
「そういうこと。昔から女と見れば手を出しまくってたこの馬鹿が、いーきなり影作っちゃって」
「ますます女性にモテはじめたと」
「きゃははっ!!そうなのよ〜〜〜・・・って、これじゃ話が進まないわ」
腕を組み直し、オリヴィエは斜めにリュミエールを見た。
「すみませんオリヴィエ、冗談ですよ。その影の原因が彼女ではないか?ということでしょう」
水色の髪が木漏れ日に透け、逆光に細く輝く銀色がリュミエールの憂いた笑顔を囲む。
最高の演出が加わったこの「リュミビーム」にはオリヴィエも勝てない。
(ほんっとにこの男は・・・)
苦笑しながらオスカーと同じく壁に身を預けると、覗き込むように尋ねた。
「そうなんでしょ、オスカー?」
「ああ、だが今考えればそれは些細なことさ。なぁオリヴィエ、女って奴はああも変われるもんなのか?」
一瞬の沈黙ののち、オリヴィエとリュミエールは顔を見合わせて吹き出した。
「ふふふ、何を言い出すのかと思えばオスカー」
「あははははは!!!おっかしーっ少女漫画じゃよくあることでしょ!」
「そ・そうなのか?」
「眼鏡を外して三つ編ほどいたら、お目々キラキラのお姫様って〜」
「なっ、なぜ知ってるんだ!オリヴィエ!」
「定説ですよね」
「定説だよね〜」
学園一のプレイボーイもこの2人の前では気が抜ける。もう言われ放題だ。

《続く》


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