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                  ●シリーズの幕開けとなった、「傷付けるものなし」というタイトルの悲劇。 
                  天才児でありマフィアの義子であったために、数奇な運命をたどることになったジェームス・ブライアンの少年時代を描いている。 
                  初期の稚拙な絵柄ながら、高いテンションのストーリーと描き込みで、シリーズ中でも傑出した内容の作品である。 
                  /★★★★★ 
                   制作エピソード/ 
                    実を言うと、作者はアマチュア時代はPALMシリーズ以外でデビューしようと試み(新書館に持ち込みをする前に描いた投稿作品は、すべてPALM以外の作品だった)、PALMでデビューしてからは、探偵物路線で作家初期の時間を稼ごうと考えていた。 
                    尊敬する作家・芸術家がみんな中年以降に開花したのを見て、高度な技術や人間的な成熟を要するであろう大河物路線執筆は、40歳か、せめて30以降くらいのスタートがふさわしいと漠然と考えていたのだ。 
                    今でもそれは本当だろうと思う。しかしPALM大河物路線の制作年数が想像をはるかに越えていたことを思うと、のんびり道草をくう時間はそれほどなかったかもしれない。 
                    ともあれこの「ナッシング・ハート」は、わたしが自分で連載開始直前の探偵物路線の企画を取り下げ、かわりに連載を希望したものだ(だったと思う)。 
                    当時の担当者関口さんは、「11歳の子供が人を殺す話。」というわたしのいいかげんな説明(PALMのストーリーはどれも、口頭であらすじを説明するとコーニーで最低なので、わたしはあまり真剣にストーリーの説明をしたためしがない)を聞いて、一瞬「そんなバカな」と思ったようだが(また、関口さんはわたしに大人でない男が描けるのかどうかもちょっと心配していたらしい)、シリーズ全体からのポジションなどを話すと、二つ返事で連載を承知してくれた。 
                    Feb.1998 
                    
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