another report
【限りなく透明に近いSTONES 〜 3.21 at Osaka Dome 〜 /DJ PIGG 編】

MICK今回のツアーは、当初行く予定など全くなかった。
これまで過去2度のジャパンツアーは、其のつど足を運び感涙しては大騒ぎしたものだが、Voodoo Lounge Tour 以降、俺のターンテブルの上で奴らのレコードが回る事はなかった。そして、B.T.B にも関心がなく一度も耳にしたことがなかった。
なぜなら、俺自身がSTONES からもR&R からも全く別の世界で生息していたためだ。
この要因を作った一人としてKeithがいる。

10数年前、KeithやJoe Strummer(CLASH) の影響で、REGGAE の世界に足を踏み入れた。その頃、周りの奴らはREGGAEをケダルいリズムと言って全く興味を持たなかったが、俺は、完全にハマってしまった。
しかし、その頃は、まだ俺のR&R 魂には熱い火が燃えまくっていた。
つまり、VELVET UNDERGROUND を聴いた後でも何の違和感もなく、Bob Malrey を流していたという状況である。
まあ、どっちもガンジャがよくマッチするからかもしれないが....

MICKそして、LONDON KNIGHTというイベント に影響を受け、DJ なるものを始めてしまった。
当時俺は、R&R やPUNK をスクラッチ (※1)していたというイカレタ野郎だった。
しかし、周囲にREGGAE を回す奴が少なくて、「俺はこっちの方面も得意だから俺が回すよ」って言ってしまったことが、俺をR&R から更に遠ざける事となろうとは…。
そう、毎日がREGGAE 漬けになってしまい、頭の中はラスタカラーで覆われてしまったのだった。
REGGAE BAR に頻繁に出入りするようになり、DJ (※2)SELECTOR(※3) の奴らと一緒にいることが多くなり、つきあう彼女もドレッド の娘だった。

いつしか世の中はCLUB 系の音が段々ともてはやされるような市場となっていった。
街中の店先でも、TV CM やドラマのBGM でもREGGAE が頻繁に使われるようになり、「夏はビールとREGGAE さっ」とそこらのリーマンまで勘違いな事言い出すようになる始末だ。REGGAE もビールも一年中楽しめるんだよ。REGGAEはただの季節音楽じゃねえんだよ。バーカ!
一部のマスメディアがREGGAEを漂った煽り方するもんだから、ジャパスプ(※4)に行ってもDANCE HALL(※5)しか知らないアホなマナー知らずのガキばかりが増えてしまったのだ。そんな時期に、俺に衝撃を与えたのが当時イギリスで流行っていたACID JAZZ である。これは強烈だった。とにかく格好良いのである。まさにBE COOL!
いつしか俺はBE BOP なスタイルへと変化していた。そうなるとLIVE HOUSE にも行かなくなり、CLUB に入りびたっているような俺にとっては、STONES もR&R もはるか2000光年の彼方に存在していた。

……………………………………………………

そんな俺が重い腰を上げるハメになったのも、ジャパンツアーが始まる前に、顔見知りのBEROから「センターステージ見ないと、あなた一生後悔するわよ」という脅しを受けたのと、その“センターステージ”という甘美な世界に曳かれてしまったからだ。
その時点で2000光年先にいたSTONES魂 が、Moonlight Mile まで俺に近付いてきた。
さらに、知人から「最終日のアリーナあるよ」という誘いで、俺はSTONES とLet's Spend the Night Togrther する決心がついた。(ダッセ)
しかし、いざ新幹線に乗り込んだものの「ひどい二日酔いで辛いし、家で寝ていたい」と少し大阪行きに後悔していた。俺は単純で優柔不断なアナーキー野郎である。言い換えると純粋なハートと少年の気持ちをいつまでも持ってるということだ...と思う。
なわけないか....。

人で混雑した交差点を渡り会場が近付いてくると先程までタメラッていた俺が、いつしか大きな期待と奴らのGREAT R&R SHOW が見れるという意気込みですっかり舞い上がっている。
「また 奴らと同じ空間で音と空気を同時に呼吸することができるんだ」
鼓動が高まってくるのがわかる。
ビール片手に席につくと、ゴキゲンな選曲のBGM が流れてきた。もうこうなると気分は高揚し、あとはあのステージから奴らが飛び出してくるだけだった。

しかし、大きな問題と不安が出てきた。前述したように俺は、R&R の裏切り者である。
新幹線の中でも俺は、SELGIO MENDES(※6) U.F.O(※7) を聞いていたんだ。そう、最近のSTONES の曲を、まったく知らなかった。"STRIPED" は、仕事の関係上(※8)聴いたが、本当にそれ以降、この日までSTONES を聞いていないわけで、ひょっとしたら 昔の曲も忘れてんじゃないだろうかと大きな不安があった。とてもイントロでタイトルを判断することなんかできないのではなかろうか.....
STONES に魂を売った人達から言わせると、俺みたいな奴は、この場所に居る資格はないと言われるだろう。でも俺も昔、奴らに魂を売ったんだ。
MICKDRUG を教えてくれたのも彼らの自伝からだった。こうゆうのが格好良いと勘違いしていた大馬鹿野郎な俺だったが、遠い存在の奴らにもっとも近付く方法でもあった。
学生の頃、大家にDRUG がバレ「学校と警察には知らせないから今すぐ出て行け」とアパートから追い出された事があった。痩せ細った俺の体はDRUG で黒く塗られていた。
この出来事がなかったら今頃、完全に廃人となっていただろう。
そんな過去を思いだし、そして裏切り者の不安をよそについに客電が落ちた。

……………………………………………………

SHOWも中盤にさしかかり、センターステージに橋が渡った。メンバーがセンターステージに向かう。
俺の体に電流が走る。スモールをイメージさせるようなステージングに頭の中が真っ白になる。Little Quneeie が終わり、I Just wana to make love to you だ。おそらくこの日のSHOWを見たオーディエンスの多くはこの曲を聴けた事を至福の喜びと思うだろう。 もちろん、予想にもしていないこのタイトルに俺も歓喜した。
しかし、俺は今回のツアーを見るのは今日が初めてだ。多くのフリーク達は、アメリカ、東京と何度も目にしているだろう。そんなオデーィエンス達と違って俺は、全曲を新鮮に感じる事ができる。
次の、Like a Rollng Stone で体全身に鳥肌がたつのがわかった。
「Mick よ、あんたやっぱ凄いや。あんたのセンターステージでの動きは、20年前のビデオを見た時と変わんねえよ」。
今回多くのオーディエンスはセンターステージに全魂を注ぐというのが理解できる。でも、数年振りに別世界から舞い降りてきた俺は、皆の数倍、体の奥底から新鮮にR&R を感じることができたぜ。
めちゃくちゃ気持ちよかったよ。 わりいな。
なーんてね。こんな強がりを言ってはみたものの.....本当は、日替りの曲を全部生で聴けた人達がいると思うと真剣に羨ましいっす。
Time is on My Side なんか聞かされたら、俺は泣くな。うん、間違いなく泣く。

98年3月21日土曜日、奴らは、俺にとって限りなく透明に近い存在になった。(※9)

最後に今回大阪でお世話になった方々に心からRespect !


MICK
  • ※1 ミキサーと2台のターンテブルを使いレコードを回す(擦る)事。色んなテクニックがあり、Hip Hop 系のDJ は、このテクニックに人生をかけている。
    テクの無い俺は勢いだけで回していた。

  • ※2、※3 ここで言うDJ とは、レコードを回すDJ では無い。REGGAE では、レコードを回す人をSELECTOR と呼び、MC をDJ と呼ぶ。

  • ※4 REGGAE JAPAN SPLASH の略。毎夏日本各地で行われるREGGAE の一大イベント
    同じ様なイベントで、REGGAE SUN SPLASH というのがあるが、サンスプと呼ぶ。

  • ※5 REGGAE というカテゴリーの中の一つのジャンルで、簡単にいうと縦乗り的な音。DJ がマシンガンのように歌いまくる。RAP が生まれたルーツ ともいわれている。
    ラガマフィンと称する人もいる。

  • ※6 BOSA NOVAの第1人者。数年前のCLUB JAZZ の大ブームの中でMa-shu kay Nada がリバイバルヒットしてからBOSA NOVA を取り入れるDJ が急に増えるようになった。

  • ※7 日本が世界に誇る3人のDJ 集団で正式にはUnited Futures Oganization 。
    彼らが日本でCLUB JAZZの世界を確立させたと言っても過言ではない。
    またDRUM'N'BASS やRATIN などをいち早く取り入れる先駆的なセンスは日本のCLUB シーンの中で群を抜いている。

  • ※8 このCD はエンハンスドCD として発売され、この時使用されたソフトに絡む仕事をしているために検証と称して、仕事中に堂々と見ることができた。

  • ※9 はい、おっしゃりたい事はわかります。村上 龍の「限りなく透明に近いブルー」のパクリです。最後にかっこつけただけで無理やりタイトルとごじつけました。
    ごめんなさい。



BRIDGES TO BABYLON specialのTOPページへ

BACK STONES MANIAC